産業キャリア教育プログラム~授業紹介~
トップ> 産業キャリア教育プログラム~授業紹介~> 【技術論3】KDDI 第4回「通信網とトラヒックの確保」「次世代インフラ技術への展望(最近のトピック)」
授業の最初に、今のホットニュースとして、岩手・宮城内陸沖地震における携帯電話による災害伝言サービスの活用と問題点についてのお話を伺いました。災害伝言サービスは、阪神・淡路大震災のときから重要なサービスとして注目されています。ただし、携帯の災害伝言サービスは携帯通信各社が別個に提供しているため、被災した友人が契約している携帯通信会社がわからないときなどは、複雑になり、高齢者には使いにくいといった問題点が指摘されています。
さて、本日の本題のテーマは2つあります。1つは、「通信網とトラヒックの確保」です。
1.ネットワーク構成
2.通信サービスの段階
3.非常時における通信確保のための方策
4.「災害時優先電話」の基準について
5.ケーススタディ
6.災害時の情報ネットワークの役割
もう1つは、「次世代インフラ技術への展望(最近のトピック)」です。
1.はじめに
2.次世代無線インフラ技術
3.次世代光インフラ技術
4.NGN(次世代ネットワーク)
5.おわりに
最後に、先週とは別のユビキタス社会を描いたビデオを見ました。
携帯電話は携帯通信会社によって異なる移動網につながっています。固定電話は固定網につながっています。移動衛星網もあります。そしてそれらは関門交換を通して接続しています。インターネット網は各移動網や固定網、移動衛星網に接続しています。公衆電話網は固定網に接続しています。IP網は独立しています。
サービス種別には音声・データ・画像があります。接続種別は回線交網とIP網に分けられます。
通信サービスの接続については、平常時から非常時まで4つの段階に分かれています。
第1段階:平常時の通信(緊急通報を含む)
第2段階:重要通信の確保(バックアップ)
第3段階:重要通信の確保(優先通信接続)
第4段階:非常用通信の確保(臨時回線の設定)
大規模災害のときは第3段階にあたります。一般の通話やメールは制限されます。災害救助のための通信が最優先されます。
非常時には通信衛星を使用します。衛星から固定地球局、可搬型衛星地球局、車載型衛星地球局へデータが送られ、固定地球局からユーザーへ、可搬型衛星地球局、車載型衛星地球局を通じて災害現場へ送られます。
「電信通信事業法第8条 重要通信の確保」に定められています。
「災害が発生し、または発生するおそれがあるときは、災害の予防若しくは救援、交通、通信若しくは電力の供給の確保または秩序維持のために必要な事項を内容とする通信を優先的に取り扱わなければならない。」とあります。
①阪神・淡路大震災
1995年1月17日の午前5時46分に阪神・淡路大震災が発生しました。災害により、有線回線を中心とした通信網の断線被害を多発して復旧までに長期間を要しました。しかし、携帯電話や自動車電話の無線回線による通信手段は電源の復旧に応じて即時に回復しました。
②新潟県中越大地震
2004年の11月24日午後5時56分、新潟県中越大地震が発生しました。新潟県への電話が集中したために交換機が輻輳し、発信規制がかけられました。また、山間部へ続く通信ケーブルやその迂回路も破壊され、外部からの情報にも孤立する自治体が出ました。加えて阪神・淡路大震災以降、大地震に強いとされていた携帯電話も震源地周辺では中継局の設備損壊や停電などがあり、中継局の機能維持のために非常用として蓄電されていた予備のバッテリーも、通話の集中により1日で使い果たされてしまいました。そのため、広範囲で使用不能となりました。
防災の観点から:災害予告
発生時:避難活動における連絡ツール
発生後:安否確認、救援活動の連絡ツール
災害時には安否確認のコールが発生地域に殺到してしまいます。このため災害時は、重要通信の確保と輻輳制御のために、一般のコールを規制することになっています。重要通信の確保のため、非常用の臨時通信システムを構築することや安否確認のための伝言サービスなどを展開する必要があります。
1990年代から急速に進んでいる通信の大容量化についてのお話を伺いました。グラフで、伝送容量がモバイル、無線LAN、FWA、光通信(アクセス系)、光通信(幹線系)が年代ごとにどれだけ大容量化したのかを見せていただきました。
auのブロードバンド化展開を例に高速化の歴史を御解説いただきました。
端末、サービス、ネットワークのそれぞれが進化していきました。端末のメモリ容量、プロセッサクロック、画面サイズ、カメラ解像度、電池の進化があり、サービスは第2世代のフォトメールから、第3世代サービスの位置情報サービスや着うた、ワンセグなどへと広がり、ネットワークも進化していきました。高速化と大容量化が大きな流れとなっています。
将来へ向けての計画はCDMA2000無線アクセス技術のブロードバンド化があるそうです。
モバイルWiMAXの適用領域は第4世代通信になります。実験は終了しており、今度事業化される予定です。
ホームネットワークへの取り組みも行われています。ひかりoneホーム向けの宅内LANサービスの拡充がそれです。2006年12月9日に高速PLCモデムの提供開始、2007年初旬に同軸ケーブルモデムレンタルの提供が開始されました。
次世代光アクセスNW研究開発について御教授いただきました。光空間伝送技術には無線免許が必要ない、干渉対策が必要ない、装置の小型化が必要、セキュリティに強いなどの長所があります。
事業化に失敗した例についても御教授いただきました。アメリカのAir Fiber社のメッシュ形光無線システムです。この仕様は、光無線にあります。しかし、東京は高層ビルが多くて無理でした。加えてベンチャー企業でしたので、企業基盤は脆弱で倒産してしまいました。そのためにこの技術はお蔵入りとなりました。
可視光通信システムの可能性について御教授いただきました。応用例の1つとしては、屋内位置情報連携に使うというものです。応用例のもう1つはホームネットワークに使用するというものです。
これはfixed mobile convergence と呼ばれる固定・移動通信を統合したマルチメディアサービスを実現するためのIP技術を利用する次世代通信網です。KDDIではウルトラ3Gサービスを推進しています。これはこれまでのインターネットではありません。NTTではNGNの採用により、これまでの交換網を全て取り替えるようになります。
最後に、21世紀の情報社会といわれている人に優しいメカトロ情報社会についてのお話を伺いました。また、将来の技術を考えるにあたって、100年先の未来を楽しむことの大切さを強調されていました。これからの方向性として、光通信技術の発展は「情報通信社会の基盤インフラ」として不可欠であること、モバイル通信の発展はどこでもいつでも情報を取得する「情報通信コンセント」として不可欠であること、インターネットの発展にはセキュリティの強化が不可欠であることを伺いました。
講義の後で30分ほどのビデオを拝見しました。「AURA 2015年情報化社会からのメッセージ」というビデオです。ある家族を中心にした3話オムニバス形式のドラマの中に未来の情報技術とそれが実生活にどのように生かされるかを描いています。活用方法のほか、それに対する反発心や、技術が発展しても変わらない人間の本質も示唆した表現もありました。笑いあり涙ありのストーリーと一緒に楽しめるビデオでした。
(2008.6.19 担当K)